衛生管理者とは

労働安全衛生法第12条では、常時50人以上の労働者を使用する事業場の規模及び業種の区分に応じ、衛生管理者免許、医師、労働衛生コンサルタント等の免許、資格を有する者の中から「衛生管理者」を選任し、その者に安全衛生業務のうち、衛生に係る技術的事項を管理させることとなっています。また、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場においては、安全衛生推進者もしくは衛生推進者の選任が必要です。

職務

  • 労働災害の防止、危害防止基準の確立
  • 責任体制の明確化
  • 自主的活動の促進
  • 労働者の安全と健康の確保
  • 快適な職場環境の形成  等

選任義務

労働安全衛生法において、一定規模以上の事業場については、衛生委員会の設置、総括安全衛生管理者、衛生管理者等の選任を義務付けています。

■事業場規模ごとに選任しなければならない人数

事業場規模(常時の労働者数) 衛生管理者の人数
50人~200人 1人
201人~500人 2人
501人~1,000人 3人

1,001人~2,000人

4人

2,001人~3,000人

5人

3,001人~4,000人

6人

■業種ごとに選任しなければならない免許保有者

業種 免許等保持者
 農林水産業、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・水道業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業  第一種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント等
その他の業種 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント等

注)次に該当する事業場は、衛生管理者のうち1人を専任の衛生管理者とすることとなっています。

  1. 業種にかかわらず、常時1,000人を超える労働者を使用する事業場
  2. 常時500人を越える労働者を使用する事業場で、坑内労働または一定の有害な業務に常時30人以上の労働者を従事させる事業場

原則としてその事業場に専属することとされ、1001人以上(一定の業種にあっては501人以上)の事業場では複数の衛生管理者のうち少なくとも1人は衛生管理者の業務に専任する者を置かなければなりません。
なお、労働安全衛生法は、船員法の適用を受ける船員については、適用除外となっているため(第115条)、衛生管理者を置く義務はありません。
なお、同条において、鉱山保安法第2条第2項及び第4項の規定による鉱山における保安に関しては労働安全衛生法が適用されないとありますが、衛生に関する部分は適用があるため、衛生管理者の選任についても当然に適用があります。 同様に、国家公務員の事業場(つまり、国の官公署)についても、国家公務員法附則第16条において、労働安全衛生法の適用を除外しているため、衛生管理者を置く義務はありません(ただし、地方公務員の事業場においては、地方公務員法に適用除外の規定がないため、衛生管理者を置かなければならないので注意)。

衛生管理者免許

衛生管理者として選任されるための免許が衛生管理者免許であり、次の3種類があります。

  1. 衛生工学衛生管理者免許
  2. 第一種衛生管理者免許
  3. 第二種衛生管理者免許

衛生工学衛生管理者免許は、大学又は高等専門学校において工学又は理学に関する課程を修めて卒業した者など一定の資格を有する者が厚生労働大臣の定める講習を受け、修了試験に合格することにより取得できます。所持資格により一部科目免除が適用されるため、所要日数は最短で半日、最長で5日に分かれます。試験の難易度はそれほど高くないと言われているものの、免除科目が無い場合には講習は5日間に及び、実施する機関は少ないです。

第一種・第二種衛生管理者免許は、厚生労働大臣の指定する指定試験機関「公益財団法人安全衛生技術試験協会」が行う免許試験に合格することにより与えられます。

受験資格(代表的なものを記載)

  • 大学(短期大学を含む)又は高等専門学校を卒業し、1年以上労働衛生の実務に従事した者
  • 高等学校又は中等教育学校を卒業し、3年以上労働衛生の実務に従事した者
  • 10年以上労働衛生の実務に従事した者(このうち、労働衛生の実務の確認は、事業者証明書により行われます。 また、第一種衛生管理者免許は、保健師、薬剤師、等の一定の資格を有する者に無試験で与えられます。)

労働衛生の実務とは、次の内容と定められています。

  1. 健康診断実施に必要な事項又は結果の処理の業務
  2. 作業環境の測定等作業環境の衛生上の調査の業務
  3. 作業条件、施設等の衛生上の改善の業務 研究の業務
  4. 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備の業務
  5. 衛生教育の企画、実施等に関する業務
  6. 労働衛生統計の作成に関する業務
  7. 看護師又は准看護師の業務
  8. 労働衛生関係の作業主任者(高圧室内作業主任者、エックス線作業主任者、ガンマ線透過写真撮影作業主任者、特定化学物質等作業主任者、鉛作業主任者、四アルキル鉛等作業主任者、酸素欠乏危険作業主任者又は有機溶剤作業主任者)としての業務
  9. 労働衛生関係の試験研究機関における労働衛生関係の試験
  10. 自衛隊の衛生担当者、衛生隊員の業務
  11. 保健所職員のうち、試験研究に従事する者の業務
  12. 建築物環境衛生管理技術者の業務

免許試験

  • 試験は、全国7か所の安全衛生技術センターで定期的に実施されます。
  • 第一種は第二種の上位免許に当たりますが、受験申請は段階を踏む義務はなく、最初から直接第一種を受けることも可能です。
  • 合格後の免許申請は、東京労働局に対して行います。

試験科目

第一種

(第二種衛生管理者免許を受けていない場合又は同免許を受けているが一部科目免除を希望しない場合)

  1. 労働衛生
  2. 労働生理
  3. 関係法令

特例第一種(第二種衛生管理者免許を受けていて一部科目免除を希望する場合)

  1. 労働衛生(有害業務に係るものに限る。)
  2. 関係法令(有害業務に係るものに限る。)

第二種

  1. 労働衛生(有害業務に係るものを除く。)
  2. 労働生理
  3. 関係法令(有害業務に係るものを除く。)