一般財団法人建築物管理訓練センター
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事業者としての安全責務

労働局登録機関 建築物管理訓練センター

災害と事業者責任
  1. 労働安全衛生法の義務者は「事業者」
     労働安全衛生法の主たる義務者は、「事業者」とされています。事業者とは「事業を行う者で、労働者を使用するものをいう。」と定義されており、具体的にはその事業における経営主体のことで、個人企業では事業主、会社その他法人では法人そのもののことです。このため、事業者から例えば課長などに権限が付与されていても「事業を行う者」に該当しないので、その課長などは事業者になりません。
    <参考>労働基準法の「使用者」とは、事業主などその他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をするすべての者をいい、各事業において、労働基準法各条の義務について実質的に一定の権限の付与がなされていれば課長、係長などでも使用者となります。

  2. 両罰規定
     労働安全衛生法第122条では、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従事者が、その法人又は人の業務に関して、第116条、第117条、第119条又は第120条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。」と規定されています。これは、いわゆる「両罰規定」であり、「行為者を罰する」の文言は法令違反の実際の実行行為を行った自然人(人)を罰することを、また、「その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する」は業務主体である事業者そのものに対しても罰金刑を科することを規定しています。この場合、事業主体についてはその事業主体が「法人」であれば「法人そのもの」を、事業主体が個人経営であれば業務主体としての「人」に対して罰金刑が科されることになります。
     企業が資本を投下し、機械設備を導入し、労働者を雇い入れて生産を行っているが、これらの企画、検討、実施の段階において、経営者がその詳細な事項まで自分がすべて指示しているわけではなく、自社の社員や他者の専門家に任せていることが多いです。
    このため、工場長や部長・課長、現場の職長などの管理監督者に一任している生産の段階で災害が発生した場合には、被災した労働者に対する事業者責任は免れうるのではないか、企業は金銭的な補償は行っても、その災害の責任は管理監督者にあって事業者にはないのではないかと考えがちですが、それは誤解です。労働安全衛生法違反に実際に関わった実行行為者(例えば、社長自ら、あるいは製造部長、課長など)個人が罰せられるとともに、事業者(法人の場合にはその法人、個人事業主の場合にはその人)に対しても罰金刑が科せられます。

  3. 災害発生時における3つの責任
     災害が発生したときの責任としては、刑事責任、民事責任、社会的責任の三重の責任が問われます。
     なお、労働基準監督署の災害調査時や臨検監督時において、労働安全衛生法違反として機械設備の使用停止命令や作業停止命令などの行政処分が行われたり、法令違反の是正を勧告されます。また、建設業などでは、労働安全衛生法違反の死亡災害や重大災害が発生した場合には、労働基準行政が国土交通省(建設担当部署)にその事実を通報することによって、その災害発生の事業者はその後公共工事の入札の参加が一定期間について停止されることがあります。

    【刑事責任】
     災害が発生すると、労働基準監督署の職員がその発生状況や原因を調査し、労働安全衛生法違反の疑いがあり、必要と認めた場合には、労働基準監督官は刑事訴訟法上の特別司法警察員として労働安全衛生法違反の被疑事件としての捜査を行われます。この場合、工場長や作業所長、管理監督者などの実行行為者から事情聴取が行われるのみならず、例え本社から遠く離れた地方の事業場の災害であっても、法人の代表である社長またはこれに準ずるトップも労働基準監督官の事情聴取を受けることもあります。また、労働安全衛生法は両罰規定となっているため、その結果によって実行行為者が送検されると事業者も送検されることとなります。
     また、警察による業務上過失致死傷の違反の有無などについての捜査も行われます。これらの捜査の結果、労働基準監督機関および警察機関から管轄の地方検察庁へ事件送致されます。送致された事件は、担当検察官により起訴するかどうかについて聴取調査などが行われることから、この際、事業者としての責任の有無を判断するために会社の代表者を含め責任者に対する出頭を求め、被疑者としての取調べが行われ、この結果、必要に応じ起訴されることとなります。

    【民事責任】
     災害によって被った労働者の身体・生命・健康などの損害について、民事上の請求権に基づいて事業者に対し行われる賠償請求の事案は増加しており、近年最も多く問われたものとして安全配慮義務違反があります。
     このように、事業者が安全管理に万全を尽くしていないために災害が発生したならば、労働安全衛生法令などに違反していなくても、被災者などの利害関係者から安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われることになります。
     ここで、安全配慮義務とは、事業経営を行う者が労働者を雇い入れた場合に事業者に課される義務、すなわち、事業者は労働契約に従って労働者を働かせ、賃金を支払わなければならないことのほか、業務の遂行に関して労働者の身体や生命に生じる危険から労働者を保護する義務のことです。

    【社会的責任】
     事業場において、災害の発生、有害物の発散、長時間労働などによるストレスの増大などで労働者の安全と健康が損なわれた場合には、企業は大きな経済的損失を被るのみならず、近隣地域の住民に直接・間接に損害や不安を与え、厳しい責任追及を受けることがあります。企業は、CSR(企業の社会的責任)の観点からも安全衛生対策に万全を期すことにより、地域社会から信頼され、安全と安心の印象を与えることがますます重要となっています。

  4. 経営トップの安全任務
     経営トップ(法人企業の最高責任者および個人企業の個人経営主をいう。)は、企業の経営を統括する者であり、経営権と人事権という強大な力を有しています。その経営トップ自らが自分の言葉で安全方針を示し、安全確保の重要性について自ら語り、現場に出て率先して安全衛生に取り組むことが大切です。経営トップは、安全方針を明確に表明し、各組織の責任者を通じて、それを全組織に徹底させなければなりません。なお、経営トップは、全従業員の安全確保のために次のことを行わなければなりません。
    @安全管理の基本を明らかにする。
    A生産ラインの各級管理監督者の安全責任と任務および権限を明確にする。
    B全組織における安全スタッフの役割と具体的な職務を定める。
     安全スタッフは、トップの安全に関する事務局的な役割を担うことを明らかにする。
    C安全目標、安全計画を作成し、その実施を計画的に進める。
    D生産活動と安全作業が一体となって行われるよう、規程・基準類を整備する。
    E構内下請事業場に対する指導・援助を十分に行う。
    F構外系列事業場の安全活動の促進を図る。


以上のよう、経営者および従事者が一丸となって取り組む姿勢が重要です。作業に潜む危険を察知するためにも、法令遵守に基づく資格者の選任について、いま一度、下記「安全衛生管理組織」でご認識ください。



安全衛生管理組織

安全管理者とは

衛生管理者とは

安全衛生推進者とは

総括安全衛生管理者とは


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